役に立たない海外生活の共有

世界のどこかでひっそりと暮らしています。

仁義なき洗濯戦争

今住んでいるアパートは、洗濯機・洗濯干し場が共用である。

アパートは3階建てで、大家さん家族を含め、おそらく全体で10部屋くらい。
大家さんはどうやら乾燥機付の立派な洗濯機を個人で使っているようだけど、部屋を借りている住人は3階 屋上のランドリールームを使っている。

元々家事の中でも洗濯が大好きで、特に日光でフカァ~っとなったタオルを取り込む時に最大の喜びを感じる。
前職で、衣料品に関する研修で洗濯についての話題になった時、誰よりも素早く洗剤の用途・効能を前のめりに答えたら講師の方に「結構こだわってらっしゃいますね…」と言われ少し変な空気になってしまったくらい洗濯への思い入れは強い。

なので事前に海外の洗濯事情を色々調べておいたつもりだけど、実際生活してみると色んなパターンの洗濯事件が起こる。

 

まずメキシコの洗濯機はどうやら二槽式が主流。

ダイヤル回すタイプのシンプル設計

 

日本で使っていたのは2020年にコロナ一律給付の10万円で買った縦型の全自動洗濯機。もちろん何の問題もなくこまめに手入れをして大事に使っていた。

そこから初めての二槽式。給水もホースで手動。
最初は日本から持ってきた少しばかりの潔癖モードで、うーん共用かあ、ホースかあ、などと思っていたけど、そんなこと気にしてられないくらい潔癖という概念がない国だったので、翌日には「ま、こんなもんか」という大きな気持ちに。

実際使ってみると、まずホースからの水量が少ないことと洗濯槽が広いせいで水がたまるのが遅い。一回部屋に帰ろうかな、と思うくらい時間がかかる。

しばらくはもたもたと洗濯をしていたけど、1か月たってやっとスムーズに全自動洗濯機風の洗い→すすぎ→すすぎ→脱水を手動でできるようになってきた。
しかも二槽式だとめちゃくちゃ脱水してくれる。たった3分の脱水でエアリズムなんかはほぼカラリ。
ただこの洗濯している時間(だいたい45分くらい)は暑い暑いランドリールームで洗濯機につきっきり。その間たっぷり汗をかくので、今着ている服も全部脱いで一緒に洗いたいと毎回思う。

 

洗濯機には慣れてきたけれど、問題はアパートの住人で共用、ということ。

この地域は一年中ほぼ晴れで雨はスコール的な感じにたまに降るくらい、と聞いていたのに、思ったより雨が降る。しかも割と朝から晩までしっかり降る。
毎日洗濯できるラッキー!と思っていたのに全然話が違う。

おかげでもちろん晴れの日は洗濯機の取り合いになる。
男女カップルやゲイのカップル、小さな子供がいるファミリーもいる。
朝起きたらまず晴れているかどうか空を見て(天気予報は本当に信用できない)、元気な日差しであれば洗濯物と洗剤を持って屋上に。

もちろん干す場所も共用で海外でよく見る紐タイプの物干し場なので、まずそこがいっぱいだったら一旦退散。更に洗濯機のまわりに洗濯物が放置してあったらしばらくは洗濯機自体も使えない。
誰かいたとしても「もう終わる?次使ってもいい?」みたいなコミュニケーションがとれるわけもなく、あー残念、みたいな顔をしていそいそと部屋に戻る日々が続いている。


そして数日前に事件が。

その日は久々の晴れ。なんとか洗濯機の使用権を勝ち取り、物干し場には3家族分くらい大量に干してあったけど、ぎゅうぎゅうに干して、数時間後取り込みに行ったら、なんとバスタオルとエアリズムとズボンが見当たらない。日本から持ってきた宝物のバスタオルがない。
風で飛んでいったの?とも思ったけど全部洗濯ばさみで止めてたし、間違って持っていかれるにしても似たような洗濯物が干してあったわけでもない。
念のため大家さんに「うちの洗濯物がなくなってて、誰か間違って持って行ってないか聞いてもらえますか?」とWhatsAppで聞いてみると、数分後に返事が。


「上の階の青年が間違えて持って行ったようです」

ほう。まさかの青年。ゲイカップルの青年。わたしのぼろぼろのズボンを?

その後、ごめん間違えた~って持ってきたけど、おそらく嘘だな、とは思った。その日は他の人のバスタオルもズボンも干されてなかった。 
それ以降、何をどこに干したかをしっかり確認して、隙あらば洗濯物をチェックしに行く、という無駄な行動をするようになってしまった。

 

今日も久々の晴れ、はりきっていつもより早く屋上に向かうと小さい物干し台は既にパンパン。洗濯機の横には誰かの次の洗濯物が控えている。
出遅れた…ととぼとぼ部屋に戻り、数時間二度寝をして、正午前に再チャレンジしてみると、なんとか干す場所は2割くらい残っている。既に干してある他人の服を少しずつずらせば急ぎのものだけは洗濯できる…!!と慌てて洗濯。
しっかり晴れだとバスタオルも2時間あれば乾くので遅めのスタートでもなんとかなるのが救い。無事全て乾き、持ち帰ることができた。
この国に来るまでは、洗濯という行為でこんなにスリルを感じられるとは思いもしなかった。

そして明日からまたしばらく雨の予報。
数日後の洗濯戦争に備えて体力を温存しなければならない。