明確な目標を持って自分の意見を言う、とか、前向きに新しいことにチャレンジしてみる、ということはどちらかというと苦手な方だ。
小学生の時から欲がない、と通信簿に書かれていたし、社会人になっても、新規プロジェクトとか新しい発想を活かした企画の立案などからは避けるように仕事をしていた。
むしろ至るところで生まれては会議だけ重ねて自然消滅しているゴールのない新規プロジェクトのことを嫌っていた。
会社の状況としては、現状の課題の洗い出しや軌道修正とか効率化とか、すぐ実行できて結果が出る現実的な業務をこつこつやる方が個人的には必要だと思っていたけど、実現できないであろう目標を掲げて大きな時間を割いて資料作りをするプロジェクトに比べると、業務としては軽んじられていた気がする。
結果として、大きな目標は持たずに利益だけは追及する、リーダーシップは持ち合わせてない平社員気質が抜けないままだった。
まあでもそんな人間もいたっていいじゃない、と開き直ってはいる。
そんなひねくれた保守的な人間が、まさかの流れで海外に住んでいる。
ハングリー精神、度胸とかは一切ないので、流されて楽して生きてなんぼだと思っている。
海外ならではの刺激的な事件等にも全く興味がないので、なんか危険な感じがする人とは距離を置くようにしている。あと自分の暮らしに影響を与えるレベルで愚痴・不満が多い人も避けている。
自然を楽しみながら、穏やかに毎日ビールを飲んでおいしい食事が食べられればそれだけでいい。
先日、久々に都会に住んでいる友人が来たので一緒にご飯を食べた。
二槽式洗濯機の隠れた魅力などについて話していたら、外からおじさんが入ってきて話しかけてきた。
ほぼ聞き取れないので、よくわからないよという顔をしてかわそうとしたら、友人が「あー、どうぞ」と言ってペットボトルのジュースをあげた。
「めっちゃ喉乾いて死にそうだから何か飲み物ないかって言ってたっぽい」
店の中にまで入ってきて声をかけるなんてなかなかの度胸だ。そしてもらえるんだからすごい。
この国の人達はあまりにも自然にスペイン語で話しかけてくる。
明らかにアジア人なのに、伝わらないだろうという感覚はあまりないらしい。
さすがに少しずつ勉強をした方が良いかなあと思っているが、ここで向上心のなさを言い訳にして全く手を付けていない。
約1時間後、ちょっと店の外に出ていた友人が戻ってきてこう言った。
「さっきと同じおじさんが、めっちゃ喉乾いて死にそうだから何か飲み物ないかって声かけてきた」
いくらなんでも声のかけ方が雑すぎる。さっきもらったペットボトルはどうしたのか。
この一連のやり取りでもやもやするのもめんどくさいので、まだ聞き取れない方がいいのかもしれない、と思った。
ただ、このくらいの厚かましさ、正直ちょっと羨ましい。