最近大家さんちのわんちゃんの顔がところどころ白くなる時がある。
元々は茶色の犬だが、工事のおじさんになでられたあとはセメントがついて白っぽくなっている。
最初は毎日やってくる工事のおじさんに鬼のように吠えていたが、悪い人じゃないと気付いたのか割と懐いている。
一人だけいる若者には何か恨みがあるのかまだ吠えてるけど。
個人的にはアロハ柄のハーフパンツとたまに持っているバスケットボールが良くないんじゃないかと思っている。
おじさん達は休憩中にトコトコやってきたわんちゃんをよくなでていて、メキシコ人は本当に犬好きだなあと思う。
初めてメキシコに来た時、みんな犬を連れていてびっくりした。
散歩の時間には大型犬を3,4匹連れている人も多く、しかもみんな大人しい。
うちで昔飼っていた犬は、散歩に行く度に超ハッスルしてあっちこっち行きたがって大変だったのに。
そして公園に行くと、たくさんの犬が整列していた。
どうやらドッグトレーナーがたくさんの犬をしつけているらしかった。
犬の学校だ。
みんな整列して真面目に【ふせ】のポーズをしていてかわいい。
ちゃんとしつけをすることも大事という文化のようで、都会では一定期間このようにトレーナーさんに預けて教育してもらう人が多いらしい。
道の反対側には、まだしつけ初期らしき犬たちがだらだらとしていた。トレーナーさんの効果のすごさを実感した。
大家さんちのわんちゃんは、最近夕飯を作っていると必ず遊びに来る。
「何かもらえますよね」という顔をして足元でずっとこちらを見ている。
いくらなんでも人んちの犬に食べ物を与えるのは危険なので何もあげたことはないが、ほぼ毎日この顔でずっとこっちを見てくる。
一度だけ、タコスを食べたあとに部屋に入れたら、うっかり下に落としてしまっていた肉の欠片を目ざとく見つけられたことがある。
「僕のためにありがとう!」という顔をしていた。それ以来こうやって何かをもらえると信じてやってくるようになってしまった。
先日は買ってきたタコスのにおいでばれてしまい、そのまま部屋までついてきて居座り続けた。
食べている最中もずっと目を潤ませてこっちを見ているので食べるのに集中できない。
ちょっとからかおうと目の前に食べかけのタコスを差し出してみた。
一瞬二足歩行になった。
結局何ももらえず、わんちゃんは悲しい顔のまましっぽを下ろして出て行った。
このタコスからかい事件のあとから、わんちゃんはあまり来てくれなくなった気がする。
部屋に来なかったらそれはそれで寂しい。
多分来週あたりに、犬がよろこぶおもちゃをスーパーで物色することになると思う。